いのちの情景/前田ふむふむ
 

たえず流れゆく虚飾で彩られた十字路たちの、
過去の足音が、夜明けのしじまを、
気まずそうに囁いている。
燃え上がる水仙の咲き誇る彼岸は、
すでに、水底の夢の中に葬ってある。
落下する時をささえ続ける幼子が
やさしく言葉で綾とりをする聖職者の午後が、
さりげなく黄ばんだモノクロの映像で充たされてゆく。

わたしは、溢れ出る、そして枯れてゆく出自が
白骨のように、潔いまなざしで、
真夏を咀嚼する荒野を駆け抜けてゆくとき、
今日も、当て所も無く、
氾濫する炎をもてあます道化師のように
偽りのみずうみをさ迷っている。
そして、爪垢ほどの重さの無いわずかの名声は、
絶えず
[次のページ]
戻る   Point(14)