異形の詩歴書 14歳冬/佐々宝砂
 
い出させた。隣家が酪農を営んでいたので、私は見ようと思えばいつでも牛を見られる状況にあり、牛は恐怖の対象でもなんでもない親しい存在だったはずなのに、入沢康夫の「牛の首」は小松左京の怪談以上に私を戦慄させた。それは現実の牛の首とは関係のない、幻想世界の牛の首だった。だから、墨壺の中で燐光を放っていた。何を書いてあるか全く理解できず、なぜ怖いのかまるで推理できず、しかし私はその詩が忘れられなかった。そのような詩もあるのだということを、私ははじめて知った。

 私はこの雑誌で、もうひとり忘れられない存在に出逢った。柳瀬尚紀である。ホルヘ・ルイス・ボルヘスが著した『幻獣辞典』のパロディとして書かれた
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