夜の翼/クリ
 

ご飯が炊き上がるほどの時間をかけて
僕はゆっくり目を開けていく。
ケサランパサランのように僕が飛んでいる世界
彼女の記憶の中では、僕は背景に過ぎないから
ここはきっと僕自身の思い出か、あるいは…。
そのうち、飛ぶことの不自然さがじんわりと
論理素子でスパークし始める。


崇高な不条理のフレーズがひとつずつ浮上
「見るまえに跳べ」
僕はそうしたのだ、彼女の朝に。
「飛べるようになるまえに落ちる術を学べ」
飛ぶまえに知らせて欲しかった。
「上がれば下がらねばならぬ」
オベリスクには確かにそう書かれてはいた。
でも、もはや手遅れ
僕は墜ちていく
僕のイカロスのロ
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