北の面影/do_pi_can
飛行機が高度を下げ
雲の平原が途切れると
一面の白い大地が現れた
ところどころに
きれいに刈り揃えられた陰毛のような
針葉樹林の群れ
一列であったり、林であったりする
その間をアスファルトの黒い地脈が伸びる
デルスウザーラよ
白い霞と見えたのは
降りしきる雪であった
デルスウザーラ
ここは
あなたが彷徨う場所だ
あなたと同じように
林の間からアイヌの子供たちが
薄汚れた文明を覗き見る
古い歴史を背負う者だけが
この地の真実に触れる事ができよう
かつて
獣達が跋扈した大地を
保護と言う名のもとに文明が支配しようとする
デルスウザーラ
耳に心地よい音楽や言葉は
この地に足つけることもなく
ただ流れ去る
素朴な心の叫びのみが
この地に刻み付けられる価値を持つ
デルスウザーラ
あなたは点々と足跡をつけ
雪の野に消え入る
細い目をさらに細め
日焼けた顔に皺を刻み
デルスウザーラ
あなたの白い息が
上空からも見えそうだ
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