三月のうた/りっと(里都 潤弥)
 
往く逃げる一月二月背もたれに寂しくしない三月のうた

お母さんが苺をごはんに炊き込んで「あら、めでたい」とはしゃぐ陽だまり

三月に産まれた人は暖かい手首と冷えた足を備える

目薬をさして花粉を洗うよに月は僕らの過去を照らして

春だとも冬だとも言えず三月 線路の上で静かな二人

四番バッターセカンドゴロで2アウトになる瞬間にこぼれた言葉

墓守ですらセーターを脱ぎ捨てて神に未来を誓う三月

よく歩く太った猫に早咲きの桜を植えて眺めていよう

チキンライスの旗を頭に載せながら寂しくていい三月のうた

産声はいつしか君の声になり僕はほどよく眠ると思う
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