梨の花/はなびーる
小津安二郎のアングルで
見渡すかぎりに手を繋ぎ合う
梨の畑を見ている
綺麗だね
白い 白い 白い 花
人に矯(た)められたのだとしても
ガラス張りのカフェで見ている
晴れてもなく
曇ってもいない
白い空よりもなお
白い 白い 白い 花
作り込まれたものだとしても
人の身の丈に仕立てられ
固定された枝に
「痛み」や「軋み」を見るのは
勝手な思い入れだろうか
清廉な花たちは
厳しい労働の合い間に
手を休める人を癒すのか
どこからか声がする
「それはおまえに足りないものだ」と
見上げると
ツバメがすいと飛んでゆく
一枝の
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