「ありがとう」という詩を書こうと思った/ベンジャミン
た
「ありがとう」と言われて
困ってしまった
そんなに簡単に言えるなんて
その人は僕より親切かもしれない
たとえば一日に
「ありがとう」と十回言えたなら
一年で三千六百五十回言える
死ぬまでに
「ありがとう」と言った
世界記録は何回なのだろうか
僕はまだ
きっとその足元にも及ばない
今からでも遅くないだろうか
今から何回言えるだろうか
「ありがとう」
やっぱり難しい
今までに何回言い忘れ
今までに何回ためらったのか
そう
引き返すことのできない時間の中で
まだうずくまっているその
「ありがとう」を
今からでも遅くない
今からでも伝えてゆきたい
「ありがとう」
「ありがとう」
「ありがとう」
こんな僕の
こんな詩にしかできないような僕の
「ありがとう」を聞いてくれて
「ありがとう」
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