水墨夜/望月 ゆき
 
ずれ、朝がおとずれる
という夢を 
まだ 見たことがなかった
それほどに
強く、しなやかな闇に
抱擁されていた



どこか遠くで
ぽたり、ぽたり、と
滴る音が聴こえている
薄目をあけながら ゆっくりと 
掌の痕を、確認する
筆先は 今も
湛えきれないほどの液体を含み
滴るそれは また
ほかの誰かの掌に
痕をのこしているだろうか



水路を、月が流れていく


戻る   Point(50)