水墨夜/
望月 ゆき
ずれ、朝がおとずれる
という夢を
まだ 見たことがなかった
それほどに
強く、しなやかな闇に
抱擁されていた
どこか遠くで
ぽたり、ぽたり、と
滴る音が聴こえている
薄目をあけながら ゆっくりと
掌の痕を、確認する
筆先は 今も
湛えきれないほどの液体を含み
滴るそれは また
ほかの誰かの掌に
痕をのこしているだろうか
水路を、月が流れていく
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