Another World(もうひとつの世界へ)/恋月 ぴの
時には詐欺師が人を欺くように
わたしはあなたを欺きたい
飲めぬ程に苦い毒薬であっても
この世に喩えようも無い甘美さを
死を迎える程耐え難い苦痛であっても
五臓六腑に熱い何かが駆け巡り
ああ そこのあなた
わたしに欺かれるなんて幸せ者よ
男冥利に尽きるわね
ブルータスよお前もか…なんて言わないで
サロメかお前は…なんて言わないで
わたし は わたし
尼寺へなんて行かないわ
詐欺師って嘘を付こうなんて思っていない
彼にはもうひとりの彼がいて
もうひとつの世界の真実を語る
だから人は彼の言葉を信じて涙して
自ら進んで身を投げ出し
持てる
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