異形の詩歴書 〜10歳/佐々宝砂
まず、母について語らねばならない。
私の母は、かなりとんでもないヒトである。イナカ住まいの高卒のキャディーだというのに、創刊号からSFマガジンを購読し、本棚には中国文学と江戸文学とハヤカワポケミスと創元ロマン全集を取りそろえ、山頭火と杜甫をこよなく愛し……そんな調子で今もますます健在だ(最近じゃ松本亀次郎の研究をやってるらしい、よく知らないが)。しかもこのひと無敵のミーハーだ。ハワードのコナンの話なぞしようものなら、涎を流さんばかりの顔になる。
このとんでもない母は、小学校に入りたての私に、いきなり百人一首と俳句と漢詩を教えようとした(しかもその俳句ときたら最初っから自由律の
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