プテラスピス/たりぽん(大理 奔)
手帳の中で森は
もう少しだけ明るかったろうと
右手の温もりを
むせかえる羊歯の
暗闇からたぐってみる
いつか満たされると思い
満たされたがっていた
月が
また今日も
欠けている
足りないひかりにむかってかざす
手鏡ににて
そこはたどり着けない水族館
あふれんばかりの海水の
トンボ玉の中で
ひとりぼっち
今日、君を追い
手帳の中の、もう少しだけ明るい森で
右手の温度を手に入れたら
暗闇で欠けてみよう
透明な限界壁
を、壊して
トンボ玉の中
を、満たしていた
心地よい束縛
を、世界にぶちまければ
自由になれる
息苦しさを
手に入れる
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