涙の物語/アンテ
 

                           (喪失の物語)


とうの昔に
すっかり涙が枯れてしまって以来
悲しいことがあるたび目の奥を耐えがたい痛みが襲い
彼女は辛い毎日を送っていたが
ある時
涙を再び手に入れられるという滝壺の噂を聞き
いてもたってもいられずに家を飛び出した
噂を拾い集めながら旅するうち
名も知らぬ谷にたどり着き
さらに森の奥深くへ足を踏み入れると
やがて立派な滝壺にたどり着いた
そびえ立つ岩から落ちる水の流れはとても澄んでいて
手ですくってそっと口をつけると
確かに涙とおなじ味がした
さっそく目に水を注ぐと
眼球がしっとりと潤
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