薔薇と らっきょう/千月 話子
 

このように 良く晴れた日には
地下で伏せた かめの周りも乾燥して
竹炭をそっと打ち鳴らしたような深い共鳴が
少し溜めた水から浮かび上がってくるのでしょう


傍らに置いた手水鉢の水を手ですくい
丸く小石を敷き詰めた
真ん中に そっと流しては
雫の落ちると同時に鳴る
不思議な音を楽しんで
清しい朝は 過ぎて行きます


らっきょうは 私の体の中で
花を育てるように 浸透して行きます


一昨日の私 昨日の私 今日の私
まるで薔薇の花が開くように
ふわりと暖かくなる体
その頬は 素晴らしい薔薇色です




「お土産は、何がいい?」と
聞かれたものですから
私 何とはなしに
「黒胡麻。」と答えたの
あなたは 私の血色の良い頬を見て
「それもいいね。」と答えたの




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