海の波の音/狸亭
海の波の音を聴きながら
他愛のない会話をたのしむ
三年目の二人なのだから
空も海も馴染んだアルバム
月光に濡れる椰子の葉叢
思い出すら風景に沈む
寄せて来る海の波さながら
日毎に肉体をいとおしむ
贅沢な無為の並べ枕
やわらかく掌に溶けこむ
生命(いのち)の海のはかない赤裸
波は何度もゆれて微笑む
自作自演の恋物語
場末の按摩屋にきみはいた
揃えた膝の上にぴったり
細い手を組んで黙っていた
こわごわ這い回る薄明かり
下手くそな按摩だとおもった
はかなさに惹かれてひっかかり
そのうち逢瀬がかさなった
別れがてらに涙し
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