四月のいる場所/岡部淳太郎
どうせあと半回転もすればみんな忘れてしまう
だがいまは四月
鈍重な眼は春雨に洗われ
鈍感な舌は日の味を噛み
われわれはどこの場所から来たのかさえも
思い出すことが出来ない
そしてのこされる
四月に乗り遅れたあらゆる息
あらゆる乾いた土
われわれはそれぞれに暖かい
それぞれに なま 暖かい
四月の
優しい残忍さのもとで
新しい警笛が鳴る
花の庭の門番は新しい顔を知らないから
君に対して誰何するだろう
君は答える
遠い季節から
四月のいる場所へやってきたのだと
(二〇〇五年四月)
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