午後と街/木立 悟
水も土も風もなく
時に沈むものがあり
しきりに裏返る光の道端
白い曲がり角を照らしている
腕のない小さな聖人像が
ささげられた花に埋もれ
地に向かいかしづく姿は
まるで花を抱いているように見える
まだ雪の残る空き地へと
逃げ水は手をつなぎ消えてゆく
その背は次の季節の色を
やわらかくやわらかくかき分けてゆく
つむる瞳 はじまりの手
影のかたちに揺れる路地
高く長い階段を
午後はゆうるりとのぼりゆく
大きく小さく描かれた仮面
壁にひらく羽の伝言
窓から窓へ やがて空へ
水なき水の光を放つ
陰のなかへと陰は集い
沈められたもの 沈むもの
いつのまにか傷ついた手で
記憶の街を積みあげてゆく
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