台風が近づいていた/たもつ
 
つけたらそのまま漬けっぱなしにするのが我が家流だ。
塩分を控えめにした結果、カビが生えて駄目になった時もあった。
出来上がった梅干は僕の毎日のお弁当の真ん中に置かれる。
あるいは、おかずが少ない時の夕食の友となる。

手を休めて窓の外を見る。
日の当たる花壇では植物たちが光合成をしている。
結婚して今年で十一年目をむかえた。
僕らの毎日は感傷だらけだ。
僕らは生きている。日々の感傷を積み重ねて。
先日、体重が激減したので病院に行くと、バセドー氏病と診断された。
甲状腺ホルモンが異常分泌されて代謝機能が上がりすぎているだけなのだが、
診断を受ける前は本気で癌だと思って、二人ともそれなりの覚悟を決めていた。
癌ではなかったが、僕もやがてはもの凄く当たり前に死んでしまう。
そして当たり間に生きるということは尊い、と思う。
たとえどんな生き方をしていてもだ。
僕らはそう信じる。


(2004年7月1日 心太日記を一部改稿)

詩バージョン「梅干」
http://po-m.com/forum/i_doc.php?did=32935


戻る   Point(8)