終着、そこからの/望月 ゆき
ターミナルに出ると
うす青い空が広がっている
通りは車で渋滞していて
そのまんなかでは 赤信号が
意味をさがしながら
点滅する
帰らなければ、と漠然とおもっていた
帰ろうとするその方角を見失って
わたしは
いつしか前のめりに
その場に溶け出してしまう
たしかに、あの日
わたしは列車に乗っていた
遠くの水平線には 巡視船が
陽炎のように浮かんでいたし
三つ手前の駅を通り過ぎるとき
開け放った窓からは
焼きたてのパンのにおいが
入りこんできた
わたしの駅をおりるといつも
磯くさい風が吹いてきて
それはとてもしあわせな瞬間だった
その瞬間が、これか
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