思い出「じんち」/LEO
 
喧嘩の締めくくりはいつも
見えない一本の線だった

 あたしがこっちで
 のんちゃんはむこうね

そう言いながら
両腕を伸ばして陣地を分ける

 ぜったいはいらないでね
 ぜったいはいるなよ

背中を向けて
大好きな本を手にとって
読み始めるけれど
ちっとも楽しくない

のんちゃんは
のんちゃんで
わざと大きな音たてて
プラモデルいじってる

トイレに行きたくなっても我慢する
お腹が空いても我慢する

 どうしていつもこうなんだろう
 のんちゃんのばか

悔しいのか
悲しいのか
自分でもわからない
涙が零れてきたから
のんちゃんにわからないように
そっと拭った


たった一言
ごめんなさい、って
簡単なのに
難しい


その「線」を越えるまで
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