遠望/do_pi_can
御岳の向こうに未だ冠雪して眠るは
北アルプスの山々らしい
点在する千切れ雲に囲まれいて
春の前線の便りすらまだ届かない地
その地に住まうおばぁは、
縄結いながら 雪解けを待つ
日もささぬ 山の斜面の
今にも崩れそうな一軒家の
ポシャポシャと軒から垂れる水の音
燻った薪のはぜる音
だけが耳をくすぐる地
おばぁは、皺のよった無骨な手をゴシゴシと動かしながら
縄を編む
御岳の向こうにみえるは北アルプスの山々
おばぁの人生を吸い込んできた山々
未だ冠雪し
深海の山脈のように冷気に沈み、横たわり
体内に地下水を流す
そこには、
おばぁの青春も流れているに違い
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