ヒア・ゼア・アンド・エブリウェア/河野宏子
くたびれた頭を枕にあずけて
今日をほどいていく
僕の一日の終わりに
ながれはじめるイメージはいつも同じ
恋しいひとの部屋までの家路
急な坂の上、五階の角の窓、
高みに近づいて行く僕の足
坂道の引力
眠気が手伝って
また帰れないね
始まってしまった旅はまだ
ずっと長く続くから
きみの窓辺の青い花がまだ
うなだれないよう祈りながら眠るんだ
昨日の街で出会った老人は言った、
「花は早く枯れたがるものだ」
だとしたら僕はきみの窓辺の花ほども
時間の重さを知らないのかもしれない
たったひとつの地図が手がかりの旅
たったひとつ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)