ヤドカリ/ナオ
砂に流されて
つつつっとはさみで支えても
知らん顔の風は共犯なんだ
波といっしょにさらおうとするから
ぼくの未練は
黒い小さな瞳にぬれて
もつれてしまうように
ころころころげて
夕日に赤く染めあげられたからだは
貝殻の愛のことばにふるえるけれど
キスもしてやれないで
ぬくぬくと
陳腐だよ、とても
冷えていく水温
逆らおうとすれば
穴はいくつあっても足りないし
よどみながら
離れていく
泡が浜辺に染みゆく
水の記憶が
ささやいても
ぼくはただ弱いまま
眠ってしまいたくて
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