当たり前のこと/たもつ
ら、僕の従兄弟の数も半端ではない。
確か、三十人ほどいるはず。
けれども、来ていたのは亡くなった伯母の子どもを除けば、
僕ともう一人だけ。
もし自分達が死んだときは、
なるべく次の世代に負担をかけないようにしよう、と取り決めをしている。
父にそう聞いたことがある。
通夜が終わり、
身内だけで夕食をとっていたときの父の一言が忘れられない。
「姉さん、俺たちを産んでくれた母親の名前は何だったかなあ」
日々生きていく中で、記憶が欠落していったというような口調だった。
人は順番に死んでいく。ひどく当たり前のことだ。
そして、順番に忘れていく。
それもきっと
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