当たり前のこと/たもつ
 


先日、父方の伯母が亡くなった。
父は十人兄弟の六番目。
兄弟のなかで、この世を去ったのはこれで二人目になる。


雨が降っていた。
最初父は、「お前は来なくてもいい」、と言っていたが
電車で行くのは大変だから、
ということで通夜の会場まで僕が車で送ることになった。
数年前から父親は左手の自由がきかなくなり、
黒いネクタイも一人では結ぶことができなくなっていた。
僕が一度自分の首に緩めに結び、それを父の首にかけた。

「助かったよ、お母さんはネクタイの結び方、わからないんだ」

そういえば、退職して左手の自由がきかなくなってから、
父がネクタイをしているところ
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