ビー玉は瓶の底に沈殿する/美味
 
私は瓶の底で
静かに沈殿している

焦げ茶色の液体に塗(まみ)れて
歪曲した夕日ばかりが
私の唯一の慰みになり
頑なに拒んだ日はいつだったのか
もう思い出せはしない

幾ばくかのあなたと
透き通るビー玉を
転がして遊んだ追憶
落とした拍子に
砕け散ったのは明日
それでも生きるための体温は
私を蝕んで冷め止まない

染み付いた煙草の臭いが
今残る最後の繋がりなのかすら
曖昧なまま
遠くに見える燃えるような夕が
私を通して乱反射している




                   いっそ泡と
                   なつて
                   宵に
                   溶けようか





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