迷彩/英水
 
僕を通過して、僕の背中を見ていた

 背中が 痛みますか?
焦点を絞ると、私の正面を見据え、再度、女は同じことを聞いた

昨晩から、背中に宿るワダカマリがいて、
僕を押し続けている

その痛みについて、
 背中が痛みます
 背中が凹みます
 背中が翻ります 
僕が、話し続けている



  「羽化」

 そして、飛び立とうとしている

上空に積乱し続けた羽化の弾音が昨夜降り続け
目の前で 宙返りを続けている
そして今、一斉に芽吹いた迷彩色の羽が、
コンクリートで固められた地面をうろうろ探りまわり
蟻の体内でゆっくり溶融する砂糖の酸っぱさで
帰還しようとしている



  「迷彩」

今、夜が舞い上がり、
夜、あなたの背中の痛みを貫き、生えた迷彩色の羽が
一気に空気を集め
今、一斉に、
飛 び 立 ってゆ く 
そして羽音が、全てをかき消 て し 

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