薬理詩人ヘノ手紙/六崎杏介
 
天使の胎内の世界で私達は
楽園を希求する、完全なハーモニーを

屑篭に堆積した睡眠薬のシートや
血の斑点で汚れたティッシュ、空のアンプル
其れは私達の詩の産湯だ
神父の死後の、祝福の欠落した洗礼
私達は自らの美しい生を喰い散らし
千の仔を孕みし毎日に又、千の仔を産む
(黒山羊が嗤う)―幻聴だ―
其れらはすべからく畸形であり、アルビノだ
(女神像が嗤う)―幻聴だ―
そうして自らの仔をワインの河に投げ落とす
仔らは直ぐにペン先に蘇える
私達は私達の仔らをそう愛する
そう、私達の生には何もない、あるのは
楽園への憧憬と
昨日手に入れたお気に入りの薬物が少しだけ
もし、
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