冬時・幻想の春/do_pi_can
さだめし寂しいと思え
その肉体を風にさらして、
歌う苔むした1本の柱よ
カラカラと矢車の舞い、舞う、
舞ううちに時は進み
空を漂浪する魚類の
熱き眼差しも忘れ去る
とりもなおさず、取り付く島無き
突堤の上で、北風に吹き上げられて頼りなげに
波間に落ちる新聞紙のビロード
透けて見える現実と言う生身の体の
血潮の疼きよ、その発狂よ
1本の柱に絡め取られ、
なす術も無く、友を待つのみ
涙する
線路のゆがみに気づかず
線上命のたゆたい身に染みて
危なげな春の訪れを待つ一人の
老婆に成り果てる時
ぽしゃぽしゃと枝から落ちる
希望の時を拾い集め
1本の柱に縛り付けると、
夢は雲を突き抜け昇華するや
そう、君と会う夢を見た
浜の突端の漁師小屋の中
石油臭いアルミ缶
転がるを避けつつ
延縄に絡まった性欲なきベーゼを
繰り返す
体はとうに朽ち果てた
その小屋の上
カラカラと矢車
過去へ未来へと
矢車
さだめし寂しい肉体の
矢車の
花
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