漕ぎ出す春、夕日へ/たりぽん(大理 奔)
 
墓標に刻んだ自分の名前に背を向けて
てのひらはいつまでもとどかないのです
生きることの意味を知らされないこぶしが
硬く握られたその先で照らして

夕日が水平線を越えて旅立つこの場所で
朝日を迎えるには
ふり返らなければならないのですか

  (北をとおるか、南をとおるか)

  知りたいだけ
  ほんとうのことを知りたいだけ

無限に思える鼓動を繰り返して
少しずつ
僕らはどこかにたどり着く
ために
いらだちながら
繰り返すのですよね
くいしばりながら
繰り返すのですよね

風に吹かれる灯火(ランプ)を
舳先(へさき)に高く掲げて

  ゆらめきにかたちを変え
  ゆらめきにあかるさを変え

折れそうな櫂(かい)を鼓動にあわせて
小舟を揺らしながらふり返らずに
、渡っていくのですよね

  水面に灯火(あかり)
  ゆらめかせながら





  
2005-08-30自由詩投稿「ひぐらしの星座」改稿




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