静かなるささめき/
美味
ささめきが聴こえる
つうと伝った清水の中に
岩陰に隠れる魚の中に
禊(みそ)ぎを終えた頃
迫り来る闇はただ、ぼうとするばかりで
何か計り知れない畏怖を漂わせている
土気色をした私は
土にまぎれて溶け出してゆく
山になって
川になって
一つ、流動的な気だけを残して
ささめくように
水面鏡に映る月が
朧に揺れ
その幻影に飛び込む羽虫
ぱしゃりと魚が跳ねて
ささめきというささめきを
飲み込んでしまう
今宵はとても静かだ
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