星 ?/木立 悟
午後に消える鳥の声
冷えてゆく街の鉄の音
夜の波 海の嶺
黒い光のなかの
座することのない独つの星
風の名も
静けさの名も知らず
滅んだ国と
けだものの国の間をさまよう
夜に沿って野はつづく
地に倒れた花のなかで
姫の名前が燃えている
炎に照らされた草の影が
野の果てる場所までつづく
短い一日の終わりから来る
粉の光や粒の光が
すべて冷たいみどりになって
昇ることも降ちることもなくひろがり
風のかたちの枯れ木をつつむ
原のむこうの空は水色
白い花の裏側から見た夜の色
生まれ生きて死ぬものの輪が
星の内外をまわりつづける
それを見ている星
それを見ている星
光は去った
けれども星はそこに居た
光は去った
けれども星はそこに居た
歌の終わりを見とどけた手が
誰か他の手と重なることを信じて
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