桜人形/shu
です
桜人形の閉じられた青白い口元を
はらはらと花びらが舞い落ちます
おれは口を開けさせ舌を出して
その上にスプーンで
花びらをそっと置いてやります
そうしないと闇よりも深い白い穿孔が
どんどん広がって
みんな落ちてしまうからです
はなびらが舌に溶け
唇が生気が宿ったかのように
紅く染まりはじめると
桜人形はゆっくりと目を開けます
おいでませ
戯れんとて生まれけむ
白より出でて白に帰らん
空は空にて変わりなく
舞って散らせよ
わがいのち
そう舌足らずの声で囁くと
桜人形は再び静かに目を閉じます
桜の幹がぶるぶると震え
いっぱいの花びらが舞い散ります
おれはスプーンを元の場所に刺し
両手を合わせてお祈りをします
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