不良がベンチで泣いている/虹村 凌
 
転げ落ちるように道を下れたら
這いずり回るよりは楽なのだろうか
どっちにせよしゃがみ込んでいるよりはマシだろう

そろそろ煙草を買いに行かなきゃと思う

赤ん坊の頭にナイフを突き立てるように
何かが煙草を押し付けられるように
少しずつ黒くなってゆく
何かが銀であるとすれば綺麗になるのに
何かはちっとも磨かれずに
ただ灰は増えてゆくばかり


親と親とも思わないような奴らも
親が死ねばやっぱり泣くのだろう
たったひとつの親孝行を残して
涙が枯れるまで泣くのだろう

不良が公園のベンチで泣いている


子を子とも思わないような親は
たったひとつの親孝行さえさせずに
愛なんて役に立たないことだけを証明してくれる

それでも何時か血が流れ出る前に
坂の上から見える景色を眺めたいと
そんなことを考えながら煙草をふかして
不良の前をゆっくりと立ち上がる
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