自棄/松本 卓也
 
何杯の酒を飲み続けて
どれだけの吐瀉物を流し出したか
胃や肝臓に残る重苦しさも
頭の芯から首筋に響く痛みも
この愚かな心に刻みつけられた
嘆きと悔やみを忘れるに至らない

事実が目の前で弾け飛ぶ
予兆を告げる警笛に
予想した最悪を上回る災厄
何よりも恐ろしく残酷なのは
物言わぬ視線であって
晒された身がどんなにか
見苦しいものなのだろう

灰色の中で蠢く陽光が
明日に続くはずの道程を
深く淀んだ光の中に覆い隠し
笑いあう声に脅え
ふざけ合う姿に怖れ

無様を晒す我が身を肴に
どんな美酒を呷るのか
想像するたびにこみ上げる

他者など他者に過ぎない
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