春雷/ミゼット
 
雨粒に触れて 膜は破れた

私の巡ったしるしの中に

遠く、緑が燃えた



児戯の様、六番目の足を伸ばす

かそけき予感は 手のひらの中



(水盤を御覧よ、花が 踊る――)



広げた風景の裂け目から、赤が咆えながら走る

羊水が頬を濡らして、私は記憶と抱擁する

強い風が、背中の影を払った



破れた膜に口づけて

私は歌を思い出そうとする


緑は、濡れた爪が乾く頃

胸の中で目を覚ます
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