古代人のヒッチハイク/岡部淳太郎
罅割れた道の端に立つ
この道は水分を欲している
左腕を伸ばし
拳の先で親指を立てる
すると 車が止まる
あるいは止まらない
二十世紀末という
古代でももっとも新しい時代
私はそのようにして
旅をしていた
*
ああああああ、母音の根源的な最初の一音か
ら始まって、古代の神は人の頭脳に降り立つ。
藁に囲まれた、比類なき霊魂の時代、小さな
神はそれぞれの魂を貪り喰う。あ、という発
見の、発現の一音は、赤子の泣き声にも似て、
あおく、あかい、世界の秩序を打ち破らんと
して、咽喉からほと、ばしり出る。ああ。そ
れから、い。それから、う。母音はゆっくり
と、整
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