早月/アルビノ
 
シーン、気管が熱くなる感情、嫉妬は小さな少女に向けたもので、ぼくはただ、同じように手をひいて欲しかっただけなのかもしれない。早月はぼくの心に穴を掘り、しっかりと孤独を植えていった。張り巡る根が気管にからみつくよ。
 ぼくの家庭の欠員ナンバー00  早月は迎えに来ない。




 遠くからサイレン。アパートの外階段をのぼる音。ぼくは押入の中のずっしりとした旅行鞄を引きずりながら出す。玄関のドアが開いたらゆっくりと差し出してみよう。間違いはこれだけじゃありません、と伝えてみようかな。早月は見てるだろうか。どこかのテレビで。ブラウン管の向こう、まさかかわいい子どもの晩ごはんを作ってないでおくれ。
 私と同じ名前だわ、なんて笑ってないで、犯人の名前もよぅく見てよね。

 早月がぼくを思い出して、彼女の心の中にもう一度ぼくが産まれたら、
ひとりで泣くよ。産声だ。


 愛してほしいの。
 ハッピーバースデー・トゥー・ミー
 


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