一日/
紫野
人逝きて風呂場に残る水ゆるむ 石鹸ひとつ投げ入れてみる
玄関に変わらぬ夕の陽が伸びる 履かずにおいた草履の箱にも
あるじ居ぬ蛇口はぬるき水を吐く キッチンに廃棄待つ赤いドレッシング
無言にて見知らぬ者の足音聞く 片付けられし戸棚の湯呑みは
廃屋となりゆく居間の卓袱台に浅く腰掛け菓子パンを喰らう
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