果樹薫る音楽/美味
 



緑の花が
緑の草原に
謙虚に咲いていました
豊潤な匂いに誘われた蝶だけが
その甘い蜜を汲むことができるのです

あぁなんと素晴らしいのでしょう!

私は蝶の後をこっそりと追って
甘いそれにあやかることができるのです



雨が降ると
一斉に町が騒がしく
音楽を奏で始めます
とは良く言ったものですが
傘を持っていない私には
その奏楽を楽しむ余裕などないのです

あぁなんということでしょう!

私のヴァイオリンのための楽譜が
天使の賛歌ですっかり
びしょ濡れになってしまいました



あぁなんと素敵な瞬間だったのでしょう!

雲の切れ間から顔を覗かせた月が
私だけを
世界中でたった一人だけを
優しく照らしてくれたのです

あぁ!
あぁ!

日記には記さないでおきましょう
この感情は
言葉や音楽に表せないほど
実に感情豊かなのですから!




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