線の風景/
石畑由紀子
色は午後から塗りましょうと告げられ
私は途方に暮れてしまった
先生、
この鉛筆でなぞるべきものなど何処にも見あたりません
という小声の訴えは
38分の1の軽さでもって
上着のポケットにしまわれた
37人はもう被写体を定めたらしく
ほうぼうでサラサラと3Bの川が流れはじめる
その流れに
徐々に足をとられてゆく
溺れかけながらも
白紙の画用紙にしがみついている私を
黒の輪郭を背負わされた風景が
濡れた瞳でじっと見ている
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