まばたきと冬/木立 悟
 



どこへもいけない光の音が
橋の下を巡っている
水は鳴き
川は止み
雲は何かに引かれるように
ふりかえりながら海へ向かう


記憶でさえない小さな記憶
見つめる羽の目からこぼれ
歩むものへとふりかかる
いつかひとひら 水にまぎれ
見つめあったかもしれないもの
浮かび流れる 小さな記憶


雪は陽の下 土の上にいて
静かにどこかへいこうとしている
音はまるく水辺をころがり
すぎるものはうたをきざみ
小さなふるえを生きつづけている


流れのほうへと差しのべられる
傷のある指のひとつひとつが
まばゆさのなか消えては現われ
巨きな巨きなまばたきのはざまに
定まらぬ姿を残してゆく










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