夢を語る行為/篠有里
 
うやって探すし」
「私みたいに独りで暮らしていると実家がないって怖いものよきっと」
「普段は無くてもいいって思うし、帰りたくないけど、やっぱり実家なのね」
そうやって夢を現実に持ち込んで自分に分かりやすいように解釈を施す。
受け取りづらい荷物に紐をかける。
「単にくだらない夢なのよ、もういいんだけどね」
「でも何か気分が悪いじゃない?」
取るに足らなくなった夢は既知の現実に修正されて、
一日を始める準備ができる。
彼女はもうその夢の意味を追い求めない。
彼女がまた軽く伸びをする。
そう言えば彼女は悪い夢を見たそうだ。
「ああ、今日はこれから早番なのよ」
彼女は時間が来たからどうしても布団から出なくちゃいけなくて、出た。
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