夭折(三篇)/岡部淳太郎
 
いのに
まだ僕は 生きている

まだ生きている
君に先を越されたので
僕は夭折を諦める
かつては夏の寝苦しい夜のように
熱く憧れていたのだが
君を通り越してこれからも
まだ生きつづける

もう生きてはいない者よ
君の声を聞くことはもうなく
あらゆる場所で
あらゆるこれからの時間で僕は
まだ何とか 生きているだろう

もう生きてはいない
君の声を
夜の枕の中に聞こうとして
眠れずに
いまもまだ 起きている}



夭折


{引用=昏い昼
昏い日常
広がる どこまでも広く 広がる
この空でさえ昏いのだから
人の心など
限りのあるその心
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(13)