Wandering/篠有里
 
後悔は赤いシロップの味
喉の舳先に引っかかってざらりと落ちた
落ちてしまえばいつも無感覚 無かったかのように
そこまでがリミット 
それ以上はありふれている

市の公会堂 暗い二階への階段を駆け上がって
濡れた廊下を歩いて行く リノリウムの
カツカツと鳴らす靴音 後ろから聞こえるそれ
吹き抜けのホールに壊れたシャンデリア
真下には正体不明の惨殺体 囁いている

手すりを乗り越え囁くモノの傍に
降り立った、希薄な俺
目を離した隙に折り重なった 恋人同士のように
雲が切れ、採光窓が檻を作る
暗さに慣れた目はそれ以上見る物がない

彷徨という名のフォルダの中に存在する
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