そこにひとが 生きていたのだ (老人施設にて)/第2の地球
 
ほど 床ずれができることもある
オムツを弄らないように 手足を紐で縛られる生活が
車椅子から落ちないように 車椅子に縛り付けられる生活が 
日常的に存在する

そこにも 尊厳が ある

人間の食べるものには 似つかわしくないと 
人間の生きるさまには 似つかわしくないと 
それは誰が決めることなのか
それでも 生きていく 
そこにこそ 尊厳が ある


312号室のお年寄りが亡くなりました
死後数日たって 誰もいない部屋から ナースコールがなりました
後日 荷物を引き取りにきた 遺族に
「ちゃんと帰ってきてくれたんですよ」と
笑いながら そんなおはなしをしました

遺族は
「ありがとうございます」と言いながら
その場で 泣き崩れました

幽霊とか死後の世界とか そんなものは多分ない
誰だって わかっていることでしょう
でも 誰も生きていないところにすら
尊厳は あるのだと 思わされました 

そこにひとが 生きていたのだ

 
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