「箱の中の猫」/篠有里
 
して帰りに大きな魚を買って帰ってくる。
猫のために。

ああ、そろそろ私の家族がここに帰ってくる。
ろうそくに火を点けて待っていよう。
それでも祖母は、すべてを把握した私の手によって、
もっともっと小さな箱に入れる事ができるはず。
私の意志によってなされる事、
その箱に入れる佳き日を期待して、私の猫を慈しもう。

ふと窓の外を眺めれば、
あの猫が捕まえ損ねた赤い緋鯉がただつらつらと流れていく。

上限の見える、その中で。
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