爪を噛む癖/anne
 
いたのは全て終わってからで
すでに手遅れになってからで
綺麗な手なんかよりずっと
大切なものを失った


悲劇のヒロイン気取った代償
爪を噛む癖
ヒロインには程遠い
醜い手 私はこの手が大嫌い

憎くなどなかった
苦しんではいなかった
不幸は足りなかった
認めろ 認めろ

私は幸せだ
なのに


なのに胸は痛かった
なのに涙は流れた
なのにとても哀しかった
なのに爪を噛んだ
何故?
何故?
わからない




無意識に口に寄せた手
ふっと止めたのは部屋の隅の赤いギターが目に入ったから
醜い自分の手を見てみる
ひどく汚れた 手を見てみる
ギターを弾くうちに硬くなり始めた指の先

その時だけほんの少し この手を好きになれる気がした

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