アケノ花/
 
赤い花を摘む男の指に見惚れてしまった
ゴボウ色に染まっている自分の指先を見つめながら女は赤い花を積む男を見ていた
男は何事も気にしないまま赤い花だけを摘んでいる
ゴボウ色の指をした女は自分に向けられることのない視線に興奮を覚える
赤い花は露をしたたせながら見事なまでに咲いている
それにしても何故赤い花だけしか摘まないのか、女は想像している
ゴボウ色の指先はカサカサと割れ始めていた、男は赤い花の香りを嗅いでいる
かける言葉などは存在せず、穏やかな天気の良い日曜日
テラスには、カッツに苺を浮かべたシャンパングラスが白いレースのテーブルクロスに赤い影を映していた

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