春の速度/
花田春菜
冬を轢き殺して
冷たい空気と声を引き裂いて
春の電車は来る
目の前を通過して見えない
速度制限無視の乱暴さで
別れを言う暇もない
いっせいに芽吹く色を
羨んだのはだれ?
冬は粉々に砕け散り
きらきらと降り積もる
春が咲き薫れば
また一つの屍をさらして
涙を流す暇もない
もう冬は終わった
終わったのだから。
戻る
編
削
Point
(2)