春の速度/花田春菜
 
冬を轢き殺して
冷たい空気と声を引き裂いて
春の電車は来る
目の前を通過して見えない
速度制限無視の乱暴さで
別れを言う暇もない

いっせいに芽吹く色を
羨んだのはだれ?

冬は粉々に砕け散り
きらきらと降り積もる
春が咲き薫れば
また一つの屍をさらして
涙を流す暇もない

もう冬は終わった
終わったのだから。

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