下り車線/霜天
 
そうして
幼い僕の侵攻は
今、どれくらいの位置にあるだろう
左手をここに
全てが巻き戻る下り車線に添えて


旅のような言葉があった
細い腕で、深い夜に何かを抱えて
昇りそうな気持ちの震える声があった
決戦前夜
そう定めた祈るような指先に
誰と戦っていくのだろう
薄く消えていく夜の中に
強く握った手のひらの中に

闇に、伸びていく
今でも時々、暗闇のカーブに
恐怖を覚えてしまう
街灯もない下り車線に
朝に繋がっている
と、信じて


そして僕が
侵攻を再開する
薄い闇の中から
目覚めた朝の方から
眼差しで、戦えると思っていたのは
いつの頃だっただろう
全てが巻き戻る下り車線に
ハンドルに添える右手に
癖だけはいつまでも変わりそうにない
祈るように手のひらを握って

赤い空から
何もない、と思っていた空へ
小さな戦争は
今も続いている
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